研究概要 |
受精の融合機構については卵子上の融合因子としてCD9が最近報告されたのみで精子側の必須因子は同定されていなかった。申請者のこれまでの成果として、融合を特異的に阻害するモノクローナル抗体を用いて、世界で始めて精子側の合因子Izumoを発見した(Nature,InoueNetal,2005)。Izumoノックアウト精子は融合の準備段階である先体反応まで正常に進行するが、その後の卵子との融合が完全に阻害される。さらに融合を顕微授精法でバイパスすると正常に発生することから、Izumoはまさに精子と卵子の融合にだけ機能する世界で始めて発見された精子側の融合因子であった。 平成19年度は、先体反応に伴う精子の融合因子Izumoの局在変化をmRed融合タンパク質によって可視化することにより、Izumoを指標とした精子のメンブレントラフィックをバイオイメージングできる系を確立することを目的に、この遺伝子をもつTGマウスを作製した。このマウスの精子にカルシウムイオノフォアを処理することで先体反応を誘起し、継時的にIzumoの局在変化を観察すると抗体による観察では見られなかった、先体反応中にIzumoがacrosomalcapからequatorialsegmentに移動し、最終的にtacrosomalregionに蓄積される様子が観察された。これはinvivoで採取された卵透明帯通過後の精子でも同様に観察された。またIzumoノックアウトバックグランドでこのTGを1もつ雄マウスの妊孕性が回復したことから、受精の膜融合の際に機能的なIzumoが正しく局在することを明らかにできた。今後はこれらマウスを用いてさらに詳細なIzumoの局在変化とその意義に関する解析を行う予定である。
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