研究概要 |
IgGならびにIgG・免疫複合体の輸送が腸管感染症に対してどのような意義をもっているか,またFcRnがどのような分子を介してIgGならびにIgG・免疫複合体の輸送を行うのかを解析することを目的としている.なかでもFcRnによるIgGならびにIgG・免疫複合体輸送の腸管感染症における意義IgGならびにIgG・免疫複合体の輸送の腸管感染症における意義を検討するため,以下の実験を行った. 1.FcRn欠損マウスを用いたC.rodentium感染実験 方法;FcRn欠損マウスならびにコントロールマウス(C57BL/6)に8時間絶食(飲水可)後,それぞれ1x10^9CFUのC.rodentiumを経口感染させた.感染後,マウスの臨床的変化(便,体重)を定期的に観察したところ,コントロールマウスと比較してFcRn欠損マウスは死亡率の増加,著明な体重減少,便中菌量の増加を認めた.さらに感染3週後の大腸の組織の病理学的検索でもFcRn欠損マウスは著明な炎症細胞の浸潤,上皮細胞の破壊が認められた.これらより,IgGを輸送,免疫複合体を取り込めないFcRn欠損マウスは,C.rodentiumに対して感受性が高いことを明らかにした. 2.C.rodentium感染における抗C.rodentium IgGの役割 方法;FcRn欠損マウスならびにコントロールマウス(mFcRn+/-)に上記と同様,C.rodentiumを経口感染させ,Lynnらの方法(Bry L et al. J Immunol. 172,433-41,2004)でC.rodentium特異的IgGを精製し静脈内投与した.その後,マウスの臨床的変化(便,体重)を定期的に観察し,便中の菌量,大腸組織を病理学的に検索したところ,コントロールマウスでは,抗C.rodentium特異的IgG投与は感染防御作用を示したが,FcRn欠損マウスはその効果は減弱していることを明らかにした.
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