研究課題
神経細胞は、樹状突起と軸索という、機能的・構造的に大きく異なった領域をもった極性細胞である。哺乳類の神経細胞における情報伝達は、軸索末端から放出されるグルクミン酸が、樹状突起上の細胞膜に存在するグルタミン酸受容体に結合することにより成立する。したがって、神経細胞の極性とその維持は、神経細胞の情報伝達に必須である。しかし神経細胞において極性にしたがって膜タンパク質が樹状突起や軸索へ選択的に輸送される分子機構については、ほとんど分かっていなかった。私たちは、アダプタータンパク質AP-4が樹状突起への極性輸送を制御することを世界に先駆けて明らかにした(Neuron 57:730, 2008)。 AMPA型グルタミン酸受容体はその関連タンパク質TARPに結合し、TARPをAP-4が認識することにより軸索方向への輸送を阻害する。したがってAP-4ノックアウトマウスにおいてはTARPとAMPA型グルタミン酸受容体は軸索方向に誤輸送された。同様に、リポタンパク質受容体LDLRはAP-4ノックアウトマウスにおいて軸索に誤輸送された。一方、NMDA型グルタミン酸受容体、代謝型グルタミン酸受容体、トランスフェリン受容体TfRは、AP-4ノックアウトマウスにおいても樹状突起に選択的に輸送されたことから、AP-4に依存しない極性輸送系が存在することが明らかとなった。面白いことに、軸索に誤輸送された膜タンパク質は細胞表面に輸送されず、軸索内部においてオートファジーにより分解されることが判明し、AP-4がオートファジー経路にも関わっている可能性が示唆され、
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Neuron 57
ページ: 730-745
Autophagy 3
ページ: 591-596