研究概要 |
オートファジーはリソソームを分解の場とする細胞質成分の大規模分解系である。オートファジーによる分解活性を制御しうる重要なファクターとしてオートファゴソームの数と制御がどのように制御されているかを検討している。マウス個体では、絶食後全ての臓器で一様にオートファジーが誘導されるわけではないことが観察された。肝では早く、遅れて心筋や骨格筋でおこり、脳は飢餓時でも誘導されない。その際,mTORシグナルを同時に観察するとオートファジー始動とmTOR経路の抑制のタイムコースが良く相関していた。このことから生体内でのオートファジー誘導は主にインスリン受容体-mTOR系の抑制によることが考えられた。しかしながら、インスリン分泌能を欠いたストレプトゾシン誘導糖尿病マウスにおいても、依然として絶食によるオートファジー誘導が観察されたため、インスリン以外の制御因子の存在が疑われた。また培養細胞においてもmTOR阻害剤であるラパマイシンとアミノ酸除去はオートファゴソームの数と大きさの両方に対して相加的な効果があったため、mTOR非依存的なアミノ酸シグナルの関与が考えられた。そこで、アミノ酸飢餓センサーとして機能するGCN2について解析を行ったところ、GCN2欠損線維芽細胞では、血清飢餓によるオートファジーは正常に誘導されるものの、アミノ酸飢餓によるオートファジーは有意に抑制されることが判明した。従って、オートファジー誘導にはインスリン受容体-mTOR経路のみならず、GCN2を介したアミノ酸シグナルも関与することが示唆された。
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