研究課題
ポリコーム群蛋白質はクロマチン修飾因子としてエピジェネティックな遺伝子発現抑制を担う分子群であり、核内でPRC1とPRC2の2つの複合体を形成する。今回、我々はPRC1構成因子Bmi1とRing1Bの精子幹細胞における機能解析を行った。Bmi1ノックアウト(KO)マウスの精巣は形態的には野生型と変わりなく、精子への分化も正常に見られた。前回の班会議ではBmi1KOマウス由来の精子幹細胞移植において再構築能の異常を報告したが、今回W/W^vを用いて再評価したところ、特に異常は認められず、Bmi1KO精子幹細胞の自己複製能はほぼ正常であると考えられた。一方、生殖幹細胞におけるRing1Bの役割を検討するため、Ring1B^<FL/FL>マウスとTNAP-Creマウスを交配し得られたコンディショナルノッククアウト(Ring1B^<FL/FL>;TNAP-Cre)の精巣を経時的に解析した。この結果、生後3週からRing 1B^<FL/FL>;TNAP-Creの一部の精細管に形態異常が認められ始め、10週では約4割の精細管において生殖細胞が消失していた。Ring1B^<FL/FL>;TNAP-CreにおけるRing1Bの発現は、胎生期より減少・消失していると考えられるが、生後1週では、コントロールマウスとRing1B^<FL/FL>;TNAP-Creの精巣の形態やPLZF陽性細胞数に大きな違いが認められなかった。従って、成獣で認められる異常は、胎生期における発生異常ではなく、生後の精子幹細胞の増幅異常によるものと考えられる。しかし、25週令のマウスにおいても約6割の精細管では生殖細胞が維持されていることから、Ring1Bは幹細胞の維持に必ずしも必要ではないと考えられる。以上の結果は、Ring1B欠損精子幹細胞の異常が環境側の要因による可能性も示唆しており、今後、発現がより精子幹細胞に限局しているngn-3-Creを用いたRing1B遺伝子欠損による効果を検討する予定である。
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