研究概要 |
核移植による動物クローニングでは,卵の細胞質内に移植された細胞核がreprogrammingを受け,その卵は,低い確率ではあるが一個の個体にまで発生する。この現象は,既に最終分化した細胞核が,卵細胞質内の未知のメカニズムによって,受精卵同様の全能性を獲得する過程であるとも言える。1960年代に英国のGurdonによって高効率でクローングされたアフリカツメガエルXenopus laevisは,核移植時および正常初期発生時にも,細胞核内の核小体が一時的に分解され消失する(後に再び形成)。私たちは,核移植時の全能性再獲得のメカニズムを知るための手がかりとして,この卵細胞質の持つ核小体の分解活性に注目し,X.laevisの卵の細胞質から蛋白精製を行い,FRGY2が責任分子であると同定した。次いで,FRGY2やそのヒトhomologであるYB1のリコンビナント蛋白を用いて,X.laevis由来XL2細胞およびHeLa細胞からpull down法で結合蛋白B23(nucleophosmin)を取った。B23は,核小体の既知の主要な構成蛋白である。In vitroでも,recombinantのB23はYB1およびその活性ドメインと結合した。siRNAを用いたHeLa細胞におけるknock downにより,YB1による核小体の分解はblockされ,この現象はB23を介することが示された。しかしながら,核小体の分解現象と,全能性再獲得の際の核reprogrammingとの関連は未だ不明である。
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