研究概要 |
本研究の目的は、(A)精子細胞クロマチン構造に関与する遺伝子の網羅的クローニングと、得られた新規核タンパク質の機能解析、また既知のクロマチンタンパク質と各産物の相互作用、それらがもたらすクロマチン構造変化と遺伝子発現、(B)そのクロマチン状態に裏打ちされた精子細胞分化と、受精後の発生を保障する精子クロマチン構造の役割を明らかにすることである。 昨年までに我々は新規精子細胞核特異的遺伝子Haspin, Rosbin, HANP1 HILS1をクローニングした。それら遺伝子の生化学的解析からHaspinは核カイネース、Rosbinは特異的DNA配列に結合する転写調節因子、HANP1, HILS1は精子細胞特異的ヒストンH1様蛋白質であることを明らかにした。 本年度、我々は精子細胞特異的Haspin核カイネースの精子細胞での特異的発現についてHaspinの転写調節領域の解析を進め、さらにHaspin遺伝子破壊マウスの解析を行ってきた。その結果、非常に短い192bpの染色体上のDNA塩基配列がHaspinの精子細胞特異的発現を担っていることが、また、Haspinの特異的転写は、このDNA塩基配列領域のメチル化によるものではなく、精巣特異的な転写調節蛋白質複合体がこの領域に結合することによることが明らかになった。また、Haspin遺伝子の生体での役割を明らかにするため、遺伝子破壊マウスの系統を分離、維持し、その解析を進めた結果、雄性不妊症になることが明らかになった。
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