本計画は我々が単離した2つの遺伝子による生殖細胞発生機構の解明を目的とした。我々はアフリカツメガエルの未分化細胞集団であるアニマルキャップを利用して遺伝子探索を行い、Sall1というzincフィンガー蛋白が腎臓発生に必須であることを示した。さらにそのファミリーであるSall4のノックアウトマウスは子宮着床直後に死亡し、Sall4が予想外にES細胞の増殖に必須であることを明らかにした。興味深いことにSall4はE11.5の始原生殖細胞、E13.5の生殖腺、成体の精巣にも強く発現している。よって生殖細胞特異的Sall4ノックアウトマウスを作製した。Sox2 Creによってエピブラスト特異的にSall4を欠失させると、通常のノックアウトより症状が軽症化されるものの、E8.5においてallantoisやsomiteの形成不全等の顕著な形態異常が観察され、さらに内胚葉組織に移動した始原生殖細胞が認められなかった。TNAP Creによってより後期に生殖細胞でSall4を欠失させた場合、生殖腺に到達する生殖細胞が著明に減少し、移動期にも既に異常が認められた。よってSall4は生殖細胞の移動に必須であることが明らかになった。これに対してエピブラストから生殖細胞への運命決定自体には関与しない結果を得た。Sall4がHDAC複合体等と結合して、ヒストンのエピジェネティックな制御に関わる可能性を検討中である。もう一つの新規遺伝子であるDullardもカエルを利用して単離されたが、ノックアウトマウスではE7.5において始原生殖細胞の顕著な減少が認められた。BMP4欠失マウスが同様の症状を呈するため、BMP4シグナルとの遺伝学的相関を検討している。
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