研究概要 |
平成18年度において、肥大化した精巣を用いてA型精原細胞が3ヶ月維持できる培養条件を見出した。そこで、19年度はこの培養条件をもとに、正常な精巣のA型精原細胞の培養を試み、培養初期の植え継ぎ条件を変えることで培養が可能であることを示すことができた。次に、精原細胞を精子まで分化させるセルトリ細胞株ZtA6-12を用いて、このA型精原細胞の分化能を調べた。2ヶ月間培養した後、ZtA6-12株をフィーダーとして培養したところ、精子の頭部と同じ大きさの頭部を持つ精子様細胞が分化した。しかし、この精子様細胞に運動能は認められず、人工授精によっても受精卵を得ることができなかった。現在、減数分裂過程が正常に進行しているか、顕微授精によって受精卵が得られるかを検討しているところである。 また、精巣内でのA型精原細胞の細胞周期を知る目的で、BrdUの取込みによる解析や、DNA複製のpre-replicative complex構成要素Sld5抗体を用いた解析を行なった。その結果、これまで均質と考えられていたゼブラフィッシュA型精原細胞に異なる3つのサブグループが存在することがわかった。そこで、ブサルファンにより増殖中の生殖細胞に損傷を与え、その精巣が精子形成を回復する過程で、これらのA型精原細胞の動態を調べた。その結果、それらがdormant stem cell, potential stem cell,分化型精原細胞に対応することが示された。今後、培養系や細胞移植系を用いてこれらの幹細胞としての特性を検証していく予定である。
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