研究概要 |
代表研究者らは、単一細胞レベルでのマウス生殖細胞決定機構の解析系を立ち上げ、始原生殖細胞(Primordial Germ Cells;PGCs)決定に際する分子生物学的変化を捉える基礎を築いた。これをさらに発展させる目的で、我々は単一細胞から定量的かつ再現性良く発現遺伝子を増幅し、High density oligonucleotide microarrayにて解析可能とする系を確立(Kurimoto et al.,Nuc.Acids Res.,34,e42,2006,Nature protocols,in the press,2007)、この方法を用いて、生殖前駆細胞から、時系列に沿い、生殖細胞決定過程で起こる遺伝子発現動態の変遷を詳細に解析した。また生殖系列最初期に特異的な発現を示し、その決定に重要な役割を果たす遺伝子Blimp1(Ohinata et al.,Nature,436,207-213,2005)欠損細胞からの単一細胞cDNAを作成、その解析を行った。発生7.25日目のPGCと近隣体細胞を比較した結果、PGCにおいて発現上昇及び抑制される遺伝子の数はどちらもほぼ300程度で、決定PGCにおいて大規模な遺伝子発現抑制は見られないことが示された。PGC形成過程に伴いBlimp1陽性細胞群はHoxb1陽性Sox2陰性からHoxb1陰性Sox2陽性に変化すること、この過程に伴う転写制御因子群の潜在的階層的発現が明らかとなりつつある。Blimp1欠損細胞ではこの過程がほぼ完全に阻害され、Hoxb1陽性Sox2陰性の状態で停止することが明らかとなった(Kurimoto et al.,in preparation)。この過程で明らかとなったPGC形成に重要な可能性のある3つの遺伝子に関してノックアウトを開始している。
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