アセチル-CoA合成酵素(AceCS)は酢酸とCoAから、アセチル-CoAを合成する。AceCS2は骨格筋・心筋に主に発現し、絶食やI型糖尿病など、血中のグルコースが低下するとき、もしくはI型糖尿病などブドウ糖の利用が傷害されケトン体合成・利用が重要となるときに顕著に発現が上昇するが、個体レベルでの役割は不明である。そこで我々はアセチル-CoA合成酵素(II型)(AceCS2)遺伝子の欠損マウスの作成によってこの酵素の個体における役割を解析した。 AceCS2はケトン体である3-hydroxy-butyric acidやacetoacetateを基質とすることが予測されたが、これらの血中レベルは量群間で差は認められず、in vivoのRIのラベル体を腹腔内投与したクリアランス実験では、その後TCAサイクルでの代謝産物である^<14>CO_2の量にも差は認められなかった。しかしながら、AceCS2の最も強い基質であるアセテートは血中から代謝されず、呼気中へCO_2の代謝産物もほとんど検出されなかった。ガスクロマトフィーによる解析では、血中のアセテート濃度はAceCS2-/-マウスで6倍程度の増加が見られた。以上より、アセテートは、低血糖、糖尿病などのケトジェニックな状態で生産され、ケトン体や長鎖脂肪酸同様エネルギー源として必須なものであることが示された。そしてケトジェニックな状態で転写が上昇するAceCS2はこれらの代謝に必須であることが示された。KLF15はアミノ酸を分解する酵素群の転写制御を担い、絶食などでおこる低血糖時にグルコースを新生する重要な役割を担う転写因子であるが、これに加え、KLF15の標的遺伝子としてのAceCS2は絶食などグルコースを利用できないときに、アセテートをエネルギー源、あるいは糖新生に寄与する重要な役割を担うことが示唆された。
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