研究課題
脂肪細胞は、外部から多くの刺激により分化・成熟あるいは増殖状態へと移行しうることが明らかとなってきている。プロスタグランジン(PG)は、古くから脂肪細胞分化に影響することが知られていたが、インビボでの脂肪細胞に対するPG作用の意義については不明であった。研究代表者は、PGE2がEP4受容体とcAMP産生亢進を介して脂肪細胞の分化を抑制することを見出した。本研究の目的はインビボでの脂肪細胞分化・成熟におけるPGE2-EP4シグナリングの意義を明らかにすることである。(1)EP4受容体欠損マウスを用いた脂肪細胞分化異常の解析PGE2-EP4シグナルがビボでの脂肪細胞分化・成熟に影響する可能性を考え、高脂肪食負荷した野生型・EP4欠損マウスのマイクロアレイ解析を行い、EP4欠損マウスの白色脂肪組織では野生型に比べてPPARやC/EBP遺伝子の発現レベルが10倍以上に亢進していた。現在、本欠損マウスの詳細を検討している。(2)EP4受容体欠損マクロファージのTNF産生能PGE2-EP4シグナルがインビボで脂肪細胞の分化に影響する場合、その一つの可能性として、マクロファージのTNF産生が考えられる。そこでEP4欠損マウスの腹腔にLPSを投与して血中TNFレベルを調べたところ、野生型に比べて著しく亢進していた。従って、このEP4欠損マウスの脂肪細胞分化亢進の一つの理由として、マクロファージのTNF応答亢進が考えられた。(3)PGE2-EP4シグナルによるヒアルロン酸産生亢進と動脈管閉鎖研究代表者は、南沢(横浜市大)と共同で、PGE2がビアルロン酸産生を亢進させることを見出した。これにより動脈管平滑筋からの細胞外マトリクス(ECM)産生が亢進し、平滑筋遊走・中膜形成を促し、動脈管閉鎖に至ることを示した。このようなPGE2-EP4によるECM産生亢進は、細胞局所の環境を変化させるものであり、PGが同様の機構を介して脂肪細胞分化に影響する可能性も考えられる。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (5件)
Am.J.Physiol.Endocrinol.Metab. (印刷中)
J.Biol.Chem. 282(印刷中)
J.Clin.Invest. 116
ページ: 3026-3034
Pediatr.Res. 60
ページ: 669-674
J.Obstet.Gynaecol.Res. 32
ページ: 373-378