研究概要 |
独自のクローニング法を確立した上でアディポネクチン結合蛋白を網羅的に解析することを試み!た。シグナルシークエンスを持つcDNAを濃縮した後にアディポネクチンとの結合をELISA法でスクリ」ニングする2段階発現クローニング法である。本クローニング法を用いて、SDF-1やCCF18というケモカインを新しいアディポネクチン結合蛋白として同定した。アディポネクチンとSDF-1との結合には、アディポネクチンのgIobular領域とSDF-1の中央部分が関与していた。興味深いことに、アディポネクチンは、SDF-1の受容体結合には影響せず、そのヘパリン結合を抑制した。また、アディポネクチンとSDF-1の結合は、ヘパリン添加により阻害された。即ち、アディポネクチンーSDF-1-ヘパリンの3者間において互いに結合を抑制しあうと考えられた。実際、SDF-1によるヘパラン硫酸プロテオグリカン依存性MMP-9遺伝子発現誘導は、ヘパリン添加と同様にアディポネクチン添加によっても濃度依存性に抑制された。一方、アディポネクチン欠損マウスを用いて解析したところ、アディポネクチン欠損マウスでは野生型マウスと比較して血中SDF-1濃度が有意に上昇しており、アディポネクチン欠損マウスではSDF-1の生体内動態が変化している可能性が考えられた。さらに、アディポネクチンが他のケモカインと結合能を有するかを検討した。SDF-1,CCF18,MIP-1α,RANTES,MCP-1のリコンビナント蛋白を固相化し、アディポネクチンとの結合をELISAにて解析した。SDF-1が最も強く結合するものの調べた全てのケモカインがアディポネクチンと結合能を示した。本研究により、アディポネクチンの抗炎症作用の一因としてケモカインとの相互作用が関与している可能性が明らかとなった。
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