研究概要 |
アディポネクチンは、脂肪組織で高発現する脂肪組織特異的な分泌蛋白質であり、BMIが高く体脂肪の多い人では発現量が低いことが知られている。生体内では種々の多量体を形成しており、高分子量のアディポネクチンがより活性が強いことが明らかにされている。このように、その多量体の生理的意義は非常に興味深い。アディポネクチンはSignal sequence, Variable region(V),Collagen-like domain(C)及びGlobular domain(G)4つのドメインから構成されている。これまでにアディポネクチンの多量体形成モデルとして、アディポネクチン3量体はVドメインに位置する3個のCys36のうち2つが分子間S-S結合を形成し、残りのフリーのCysが別の3量体のフリーのCysとS-S結合を形成し6量体を形成する機構が提唱されている。しかし本研究では、アディポネクチン分子には三本鎖を形成することが知られているCドメインが存在することから、会合体の形成にはS-S結合のほかに、非共有結合が大きく寄与しているのではないかと考え、S-S結合が形成されない還元剤存在下で物理学的手法により多量体形成能を解析した。 会合体の形成機構および各ドメインの寄与を解明するため、各ドメインを組み合わせた配列からなるサンプルVCG,CG,G及びVCを調製し、還元剤存在下でCD,DSC,超遠心分析により熱安定性と多量体形成能を解析した。その結果、(1)Vドメインは3量体の安定化には寄与していない、(2)3量体形成にはGドメインが必須であり、Gドメインは単独で3量体形成能を有する、(3)CドメインはGドメインを伴っているときに三本鎖構造を形成することが分かった。以上よりS-S結合はアディポネクチンの3量体形成に必須ではないことが示された。
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