研究課題
これまでの研究から、(1)脂肪細胞では、細胞外浸透圧変化によって、容積感受性Clチャネルの活性化を介した調節性細胞容積制御機構が誘導されること、(2)TNFα単独投与により容積感受性Clチャネルが活性化され、その結果、細胞容積の減少が起こること、(3)脂肪細胞は、インスリン投与により容積を増大させること、(4)インスリンにより誘導されるグルコース取込の上昇が、容積増大をもたらすイオントランスポータのブロッカーで抑制されること、を明らかにしてきた。これらの結果を踏まえ、平成19年度の本研究では、以下のような実験を行った。まずインスリン依存的に脂肪細胞でNa^+/H^+交換輸送体(NHE)が活性化されるかどうかを、直接、細胞内pHイメージング法によって測定した。CO_3^-非存在下ではCl^-/CO_3^-交換輸送体(AE)が阻害されるため、細胞内pH変化はNHE活性にのみ依存する。そこで、細胞内pH指示薬であるBCECFを取り込ませた脂肪細胞を用いて、インスリン刺激時の細胞内pH変化を測定したところ、インスリン刺激によってNHE依存的な細胞内pH変化が誘導されることが明らかとなった。このインスリン依存的なNHE活性化は、PI3キナーゼ阻害剤の添加こよって消失した。このことは、インスリンによるNHE活性化がPI3キナーゼシグナル経路を介していることを示唆している。同時にTNFα投与による容積感受性クロライドチャネル活性化に関与するシグナル経路の同定を試みたが、候補分子を見出したものの、最終的な関与を示すには至らなかった。現在、継続して、シグナル経路の検討を実施している。
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Biochem. Biophys. Res. Commun. 366
ページ: 219-225
Biochem. Biophys. Res. Commun. (In press)