1.本研究は、マウス発生における脂肪細胞の起源について、神経上皮由来のものが存在するかについて、従来とは違った遺伝子工学を用いた新しいin vivoでの細胞追跡システムを構築し、明らかとすることが目的である。。神経上皮の特異的マーカーであるSox1にGFP遺伝子をKnock-in法にて導入したES細胞からテトラプロイド・キメラと、Cre-LoxPシステムを利用してSox1が発現するとYFPが恒常的に発現するマウス(Sox1-Cre X Rosa26-STOP-YFP mice)を作成した。作成したマウスでは、GFPがSox1+の神経上皮細胞で特異的に発現したり、あるいは発現し続けるので容易に区別・分離することができる。これらのマウスの解析から、E9.5のマウス胚では、試験管内で増殖可能で多分化能を持つ脂肪細胞の前駆細胞である間葉系幹細胞の活性は、Sox1+の神経上皮細胞のみに存在し、中胚葉や内胚葉細胞に存在しないことが判明した。さらにE14.5の胎仔では、間葉系幹細胞の活性は体幹部においてはPDGFRα+細胞に限定され、このPDGFRα+細胞は少なくとも、Sox1+神経上皮とそれ以外の細胞由来に分けられることが明らかとなった。また、神経上皮由来の細胞の分化経路をより詳しく調べるために、神経堤細胞マーカーであるPOを発現した細胞を追跡できるマウス(PO-Cre X Rosa 26-STOP-YFP)を用いた実験から、体幹部において間葉系幹細胞は神経上皮細胞から神経堤細胞を経て分化する経路があることが明らかとなった。 2.この研究の結果、脂肪細胞分化では、その前駆細胞にあたる間葉系幹細胞として神経上皮由来の幹細胞が最も早く出現し、その後にそれ以外(おそらく中胚葉)の細胞からも出現してくるといった、2つの発生のWaveが存在することが明らかとなった。
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