研究課題
アストロサイトの発生におけるPax6遺伝子の役割を探るため、本年度は特に1)Pax6変異体を用いた、in vivoにおけるPax6の機能解析、2)Pax6の下流制御分子の検索、3)神経膠腫(グリオーマ)におけるPax6遺伝子の発現解析を行った。その結果、1)胎生期の脊髄におけるアストロサイトの発生様式を野生型とPax6変異胚とで比較したところ、胎生16日におけるアストロサイト前駆細胞の数がPax6変異胚で有意に増加していた。この結果はin vitroにおいて、Pax6変異胚由来のアストロサイトの増殖率が増加している現象と一致する。また、in vitroでスクラッチ法によるwound healing assayをおこなったところ、Pax6変異胚のアストロサイトは野生型と比較して顕著に移動能が増加していることが確認された。2)in vitroにおいて、野生型とPax6変異胚由来のアストロサイトで発現に差のある遺伝子を検索したところ、セリンースレオニンキナーゼであるAktが候補に上がった。Aktはリン酸化されることで活性化状態になるタンパク質である。そこでこのAktについて、非リン酸化タンパクとリン酸化タンパクの存在量を、野生型とPax6変異胚由来のアストロサイトで比較した。ウエスタンブロッティングの結果、Pax6変異胚のアストロサイトで、特にリン酸化Aktの量が顕著に減少していることを明らかにした。さらに、3)様々な種類のグリオーマにおけるPax6遺伝子の発現量を、ウエスタンブロッティング法によって比較したところ、悪性度の高いグリオーマにおいてPax6の発現量が顕著に減少していることが明らかになった。これらの結果より、Pax6はアストロサイト前駆細胞からアストロサイトに分化するのに必要な分子であること、Pax6の機能が失われると、非常に増殖率が亢進し、これがグリオーマにおける高い増殖率の基盤になっている可能性が考えられた。
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Genes Cells (In press)
Proceedings of the Tohoku University 21st Century Center of Excellence Program
ページ: 15-22