アストロサイト自発カルシウムシグナルの役割を解析するため、Ca^<2+>シグナルが恒常的に抑制されたアストロサイトを作成した。具体的には、IP_3 5-ホスファターゼのcDNAをコードしたレトロウイルスベクターをアストロサイト初代培養系に感染させ、IP_3 5-ホスファターゼを安定発現するアストロサイト株を作製し、これを数回植え継ぎ増殖させ、単層のアストロサイトからなるシートを形成させた。 通常のアストロサイト及び上記の方法で作製したCa^<2+>シグナル不能アストロサイトそれぞれの上に、神経細胞を低密度で分散培養した。このアストロサイト・神経細胞共培養系において、神経細胞特異的に長期間安定してGFPを発現させることで神経細胞の形態を明らかにした。これには神経細胞特異的プロモーターからGFPを発現するように設計したレンチウイルスベクター用いた。 CO_2インキュベーターを装着した電動ステージ・オートフォーカス顕微鏡で神経細胞の形態の様々な側面を解析した。大量の画像データを取得し、画像解析ソフトで軸索および樹状突起の長さ・分枝数、シナプス密度など様々な形態的特長を解析した。ステージ上培養をすることで、軸索伸長などダイナミックな形態変化の長時間経時観察も行った。以上の解析結果を通常のアストロサイト及びCa^<2+>シグナル不能アストロサイトの場合で比較した。これにより、神経細胞の成長にはアストロサイト自発カルシウムシグナルが必要であることが明らかになった。今後はその分子実態を調べる予定である。
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