研究課題
ミクログリアにはさまざまな神経伝達物質の受容体が発現し、その細胞機能を厳密に制御すると考えられる。これまでに我々は、ATPおよびニコチンが、それぞれP2X_7受容体およびα7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7受容体)の活性化を介して、ミクログリアの神経保護作用発揮に役割を果たす可能性を明らかにしてきた。つまり、ミクログリアの過剰活性化は神経変性につながる炎症を引き起こすが、ニコチンによるα7受容体の活性化はこの過剰活性化を抑制する。一方、ATPによるミクログリアのP2X_7受容体活性化は神経保護作用を引き起こし、ニコチンはこの作用に対しては促進的な調節をかける。ミクログリアに発現するこのα7受容体は、神経型とは異なりイオンチャネル活性は示さず、ホスホリパーゼC(PLC)の活性化とIP_3感受性Ca^<2+>ストアからのCa^<2+>放出を引き起こすが、ニコチンによるミクログリアの活性調節、すなわち、LPS誘発TNF遊離の抑制、BzATP誘発TNF遊離の促進、BzATP誘発Ca^<2+>反応の増強、のいずれの反応もIP_3受容体遮断薬xestospongin Cにより抑制が認められたことから、このCa^<2+>シグナルカスケードがα7受容体を介した機能調節に重要な働きをすることが示された。また、ニコチンによるCa^<2+>反応はチロシンキナーゼ阻害薬で抑制され、α7受容体からPLC活性化の機序にチロシンリン酸化が関与する可能性が示唆された。
すべて 2006
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Journal of Neuroscience Research 83
ページ: 1461-1470