有髄神経は、典型的なニューロン・グリアの相互作用からなる構造的、機能的にも極めて精巧な神経インパルス伝導装置である。最近、ドメイン毎に特異的な分子構成からなることが相次いで明らかにされた。オリゴデンドロサイトのミエリン膜は、主にコンパクトな層構造と側面にある非コンパクトな細胞質に充たされたパラノード・ループからなる。パラノード・ループ膜は、アクソン及びアストロサイトと接する強固な膜結合の他に、自らの膜同士がtight、gap、adherensジャンクションという特殊な装置で結合している。これらジャンクションを構成する分子はいくつか知られているが、それ以外の分子構成については不明である。我々は、パラノード・ループ膜に特異的に局在する分子Opalinを同定した。Opalinは、一回膜貫通型で、N-型とO-型の糖鎖にシアル酸が付加した糖タンパク質である。隣接する2つのループ膜の特定の部位で、おそらく糖鎖部位を向かい合わせて対で存在する膜トポロジーをとると予想される。また、糖鎖はOpalinが細胞表面や細胞間接着部位に局在化するために必要であることが示された。ノックアウトマウスの解析から、Opalinは基本的なミエリン形成と機能には重要ではない事が明らかになった。一方、Opalinは哺乳類の中枢ミエリンのみに発現する特異性をもつ。従って、系統進化学上、複雑で高等な哺乳類中枢神経系の獲得の過程で生まれた新しいグリア遺伝子と言える。今後の詳細な解析により、Opalinの機能が明かされることと期待している。
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