1.黄色ブドウ球菌膜孔形成毒素の標的細胞上での膜孔形成タイミングの「一分子技法」による可視化:黄色ブドウ球菌γヘモリジンにおいて、LukFのステムのT117Cの位置に、疎水環境で蛍光を発する色素BAD州を導入した誘導体、並びにHlg2において[LukF-Hlg2]複合体形成に重要な位置にあるT29Cへ、紫外線照射により離脱する保護基nitrobenzyl bromide(NB)を導入した誘導体を作製した。両誘導体を赤血球ゴースト膜上に添加後、紫外線照射により膜孔形成を開始させた。LukF-BADAN誘導体とHlg2が分子集合し、膜上で疎水領域を貫通したステムが形成された時に発する蛍光現象が1分子技術で観察された。 2.ヒト多型核白血球膜の不溶性膜画分(DRM)、ラフト上における黄色ブドウ球菌のロイコシジン膜孔オリゴマーの形成:黄色ブドウ球菌のロイコシジン(Luk)はLukSとLukFの2成分が共同してヒト多型核白血球(HPMNL)、単球、マクロファージなどを崩壊する。HPMNLにLukSを単独で作用させるとそのうち24%がラフト上に存在し、2成分を作用させた場合には膜に結合した毒素成分の90%がリング状複合体としてラフトに存在した。一方LukFは単独ではラフトには存在しなかった。10mMメチルβサイクロデキストリン処理によりLukのラフトへの集合が阻害され、崩壊活性は示さなかった。これらの結果からLukの2成分がヒト多型核白血球膜上の不溶性膜画分(DRM)ラフト上で膜孔オリゴマーを形成することを明らかにした。
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