バクテリオファージMuは多様なバクテリアに感染できる溶原性のウイルスである。大きく構造は頭部と尾部からなるが、尾部の先端には基盤と呼ばれる構造体があり、この基盤は宿主細胞を認識して結合するドッキングポートである。本研究により基盤を構成するサブユニットの1つであるgp45の精製法を確立し、その解析を行った。その結果、C末端ドメインが安定な3量体として精製でき、gp45が大腸菌の外膜タンパク質であるOmpCと複合体を形成することが明らかになった。gp45は宿主の認識や結合に関与すると考えられてきたが、この結果はMuファージのレセプターの一つがOmpCであることを示唆している。また、gp45とOmpC複合体の結晶解析が実現すればウイルスが宿主を認識する機構を分子的に理解することが可能になる。これまで精力的にgp45とOmpC複合体の結晶の作製に努力したが、gp45が凝集体を形成するため結晶化が困難であった。本研究でgp45のC末端ドメイン単独では凝集体をあまり形成しないこと、C末端ドメインだけでもOmpCとの複合体を形成することがあきらかになったので、今後はC末端ドメインとOmpCの複合体の結晶化を試みることによりウイルスの宿主認識の仕組みを原子レベルで明らかにすることを目指す予定である。 さらに本研究では初めて構成するサブユニットであるgp41の精製に成功し、これが4量体を形成することを明らかにした。このgp41についても結晶化を試みている。
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