研究課題
熱揺動下で確率的に働く蛋白質分子機械の作動原理を探るには機能中の1分子を直接可視化しその挙動と物性を平均化せず解析するのが理想である。本課題では、個々の分子内部を観察できる強力な電子顕微鏡法で機能遂行中の超分子複合体の一瞬の姿を捉え、その3次元構造を解析するための新技術を駆使して機械の作動機序を原子モデルの動画として示す1分子の構造生物学の実現を目指す。筋収縮の分子機構として世界の大部分はATP結合型と非結合型のミオシン結晶構造の違いを根拠にレバーアーム首振り説を強く信じる。パワーストロークの間アクチンヘのミオシン結合様式は変化せずATP結合により強く屈曲したレバーアームがADP解離とともに伸展する際にアクチンの滑りが起きるという概念であるが、大き<速<動く分子モーターの構造を十分な分解能で捉えるには平均化を旨とした従来法は適用できない。われわれは1分子の構造を高い分解能とコントラストで捉える急速凍結フリーズレプリカ法により運動中のアクトミオシンの姿を捉えた。試料表面の凹凸を分子の原子座標に基づく多数の仮想画像と比較し当該粒子のコンフォメーションと投影角を精密に識別できる構造差分解析法を擁して解析した結果、運動中の頭部はSH基を化学架橋した頭部に似た、従来説と逆屈曲の状態にあり同じ形状の頭部がアクチン表面を撫でる動きと、その後その構造を保ったまま大きく向きを変え最終的に硬直複合体に至る伸展運動の2種の動きを行う可能性を示した。後者がADP/Pi放出を伴う張力発生過程で前者は低負荷の際にだけアクチンを変位させる未知の機序と仮定すれば、それらの割合を変えることで全ての実験観察結果を説明できる。一方で特徴的構造を有する指標を対象蛋白質に付加する標識法を開発した。目的の蛋白質への直接融合や高親和性リガンドを標識先端に付けるなどにより対象の特定部位の局在や向きに関する情報が得られる。
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