1)海洋性ビブリオ菌の回転に必須な蛋白質MotYの結晶構造解析 海洋性ビブリオ菌のNa+駆動型極べん毛モーターの固定子は4つの蛋白質PomA、PomB、MotX、MotYからなる。MotXとMotYはモーターの基部体においてLPリングに結合したTリング構造を形成している。これまでに我々は272アミノ酸残基からなる成熟MotYとそのSe-Met置換体をC末端ヒスチジンタグ融合蛋白質として発現し、精製・結晶化した。Spring-8での回折実験によりSe-Met置換体結晶の2.9Åのデータセットを得て、構造モデルの構築を行った。その結果、MotYはMotXと相互作用し新規の構造を持つN末部と、Palなどのペプチドグリカン結合蛋白質に非常に良く似た構造を含むC末部を持つことが明らかとなった。ここまでをまとめて、投稿論文の準備を行っている。 2)サルモネラ菌固定子蛋白質MotBのペリプラズム断片の結晶化 我々はべん毛モーター固定子複合体の結晶構造解析を目標としているが、その過程で可溶性断片による部分構造の結晶化も行っている。サルモネラ菌固定子蛋白質MotBは、そのC末端側にペリプラズムに露出した可溶性部分を持ち、我々はそれを含むMotBの断片を作成し、結晶化を試みている。このMotB断片は野生株の運動能を低下させることから、モーター中の固定子結合部位に作用すると考えられる。また、断片はペリプラズムにおいて安定な二量体を形成していることが分かった。断片の精製は容易で、1リットル培養あたり25mg程度の精製標品が得られる。現在結晶化のための条件の探索を行っている。
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