1)海洋性ビブリオ菌極べん毛モーター固定子複合体PomA/PomBの結晶化へ向けた大量発現と精製 細菌べん毛モーターのエネルギー変換機構を理解するためには、共役イオンの流入に共役したトルク発生を担う、固定子複合体の立体構造を解明することが必須である。我々はNa^+駆動型のビブリオ菌を材料に用い、PomA/PomB固定子複合体の結晶化に向けて、ヒスチジンタグを融合した複合体の大腸菌での大量発現系を構築した。現在、膜画分からの抽出に最適な界面活性剤のスクリーニングを行っている。 2)サルモネラ菌固定子蛋白質MotBのペリプラズム断片の結晶化 我々は固定子複合体だけでなく、可溶性断片による部分構造の結晶化も進めてきた。特に固定子蛋白質MotBは、そのC末端側に固定に関わるペプチドグリカン結合モチーフを持ち、部分構造としても興味深い。サルモネラ菌を材料に、このモチーフを含む可溶性のMotB断片(MotB_c)を作成し解析した。MotB_cは野生株の運動能を低下させることから、野生型MotBとヘテロダイマーを形成し固定子複合体の集合を阻害するか、モーター中の固定子結合部位に作用していると予想され、またペリプラズムにおいて安定な二量体を形成していた(文献1)。MotB_cの精製は容易で、1リットル培養あたり25mg程度の精製標品が得られる。結晶化が難航したため、MotB_cのNMRスペクトル解析を行ったところ、N末端側とC末端側の構造が不安定であることが予想された。そこで、これら両末端を削った複数種のMotB_c断片を作成し結晶化条件を探索したところ、N末端を10残基、C末端を18残基欠失させた断片MotB_<c6>において、実験室でのX線回折実験で高い分解能の回折像を得ることができた。現在Spring-8での回折実験を目標とし、MotB_<c6>のセレノメチオニン置換体結晶を準備している。
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