研究概要 |
走化性受容体によるリガンド認識 セリン受容体Tsrとアスパラギン酸受容体Tarは厳密にリガンドを識別する.保存されていないリガンド結合残基を入れ替えてもリガンド特異性は変化しないことを示した.さらに,セリン非結合型(PDB登録済)および結合型Tsrリガンド結合ドメインの構造解析を行った.その結果,TsrとTarとに共通なリガンド結合残基の三次元的配置の違いがリガンド特異性を決定するという仮説が支持された.(投稿準備中). またクエン酸受容体Tcpは,クエン酸と金属-クエン酸複合体を別々のリガンドとして認識する.私たちは,金属-クエン酸走性のみが欠損した変異体を初めて単離し,Tcpホモダイマーのサブユニット界面に位置する残基が金属-クエン酸複合体認識に重要であることを示した.この結果をもとにして,サブユニットの協同的相互作用とアロステリックスイッチがリガンドの識別に関与するというモデルを提唱した. 走化性受容体の細胞内局在と複合体形成 走化性受容体は細胞極でクラスターを形成し,これがシグナル増幅や適応に重要とされている.そこでin vivo S-S架橋法を用いて受容体ダイマー間相互作用を調べた結果,メチル化によって極クラスター内での受容体ダイマーどうしの配向が変化すると推測された.さらに,メチル化により入出力の関係(ゲイン)が変化することを示唆する結果も得られた. 一方,TarにGFPを融合し,局在過程を観察した.発現誘導後,まず菌体側面で蛍光ドットが見られ,やがて極の蛍光が強くなった.驚くべきことに,Tar-GFP菌体側面でらせん状に配置した.さらに,GFP-SecE,膜を透過できないMalE変異体とGFPの融合蛋白質を用いた観察,SecGの免疫蛍光染色による観察から,タンパク質膜透過装置Sec複合体自体がらせん状に配置することがわかった.この発見は,膜蛋白質の局在機構に新たな光を充てるものである.
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