昨年度研究計画通りにPns10チューブルの構造解析を行ったが、本年は、これを論文にまとめ、報告した。また、この経験を生かし、Rice Gall Dwarf Virus(RGDV)を感染させたツマグロヨコバイの培養細胞の電子線トモグラフィーを行った。RGDVは、12分節の二本鎖RNAを二重殻に内包するという点、形状、構成タンパク質、大きさのいずれにおいてもRDVに酷似している。しかし、RDV感染細胞とは異なり、感染細胞のミトコンドリア周辺に特異的にな成熟したウイルス粒子が、局在する。この詳細を三次元で調べるためプラスチック切片の電子線トモグラフィーを行った。厚さ50nmの薄い切片を用いたため、微細構造が非常に明瞭に認められ、RDVの原子構造から作製した低分解能構造を当てはめることができた。これによって、隣り合うウイルス粒子は互いに接触っせずにミトコンドリア外膜に接していることが認められた。免疫シナプスの電子線トモグラフィーでは、突起状の形が観測されたものの、それが、どの分子種に相当するのか、わからなかった。ここで、分子分解能をもとめている以上、従来の免疫電顕法は、分子種の同定に使えない。そこで、インテグリンのリガンドに着目し、これを直接標識することで、活性なインテグリンを同定すると同時に電子線トモグラフィーのアライメントにも使用することを考えた。また、ラベルには量子ドットを用いた。インテグリンは、フィブリノーゲンのC末端12残基に特有に結合するため、この部分にビオチン化配列を繋ぐことにより、ストレプトアビジンで修飾された量子ドットを使用できるようにした。このラベル付きリガンドは、ELISA法等で十分に結合することが確かめられた。
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