富栄養域の海水中には高密度でウイルス粒子が浮遊している。その一部は、赤潮原因プランクトンに対して感染性を持ち、赤潮の動態・終息に重要な影響をおよぼしていることが知られている。ここで、ウイルスは感染を成立させる方向に、宿主はウイルス感染から逃れる方向にそれぞれ変異を繰り返す。本研究では、赤潮原因藻ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマを宿主とする球状RNAウイルス(HcRNAV)の構造生物学的解析から、この粒子表面の構造と性状を明らかにする。この第一歩として、HcRNAVの幾つかの株のRNAからcDNAを調製した。 Y-グルタミルトランスペプチターゼ(GGT)はバクテリアから哺乳類まで幅広い生物が持つ酵素であり、グルタチオン(GSH)などのY-グルタミル基を他のアミノ酸やペプチドに転移する反応とy-グルタミル基の加水分解反応を触媒する。これまでに大腸菌由来GGTについて、この酵素の立体構造だけでなく、基質認識や触媒機構、プロセッシングによる成熟化機構を明らかにした。本年度は、2種類の阻害剤(アシビシンとアザセリン)の各々によるGGTの阻害機構を解析した。これら2種類の複合体の1.65Å分解能結晶構造から、両阻害剤ともGGTの活性残基Thr391と共有結合し、注目すべきことに四面体中間体で酵素に捉えられていることを明らかにした。さらにアシビシンでは、単にこれが酵素に結合したのではなく、アシビシン内で結合の再配置が起っていた。
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