研究概要 |
病原細菌の宿主への感染の中核的働きをするものは細菌が細胞表層に持つ病原因子輸送装置である。各々の病原細菌は宿主との相互作用の結果、特化した輸送装置を進化的に獲得してきた。レジオネラはDNA輸送系から派生したIV型分泌系に分類されるタンパク質輸送装置を持ち、その作動原理は解析の進んだIII型分泌系を含む既知のタンパク質輸送装置とは概念的に異なるものであることが期待される。我々は、レジオネラのIV型分泌装置の分子構造および構成タンパク質の原子構造を解明することにより、IV型分泌系固有のタンパク質輸送の作動原理の解明を目指して研究を進めている。 平成18年度にレジオネラIV型分泌装置の予想構成タンパク質の欠損株を網羅的に作製し、そのうち主要なタンパク質については抗体を作製して解析の基盤を構築した。これを踏まえて平成19年度には、レジオネラの膜画分を単離して生化学的にIV型分泌系の主要コンポーネントを同定する試みを行った。特定のタンパク質の欠損下で別の予想コンポーネントタンパク質の外膜への局在が消失するかどうかを網羅的に解析し、外膜にアンカーされる中核構造体の構成タンパク質としてDotH, DotC, DotD, DotF, DotGという5つのタンパク質を同定した。 IV型分泌系の作動機構を解析する端緒としてこれらの中核構造体構成タンパク質の個々の結晶構造解析をめざしている。上記5つのタンパク質について大量発現系の構築を試み、いくつかは構築を完了してタンパク質の精製方法を確立し結晶構造解析のための基盤を整えた。
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