リボソーム再生因子(RRF)はEF-Gと協同して蛋白質生合成終結後のリボソーム-tRNA-mRNA複合体に作用し、tRNA、mRNAを解離する。解離反応後の遊離リボソームは再度開始過程に導かれてリサイクルされる。我々はリボソーム再生の機構を解明し新規抗菌剤を開発するためRRFの構造とリボソームとの相互作用を研究してきた。NMR及びX線結晶構造解析による立体構造決定を行った結果、RRFは三本鎖ヘリックスバンドル構造を持つドメインIとβ/α/βのサンドウィッチ構造をとるドメインIIよりなること、及びドメインIIがドメインIに対して角度60度の範囲で揺らぐことを明らかとした。ドメインIに相当するモデルペプチド(RRF-DI)を合成し相互作用解析を行った結果、RRFのリボソームとの結合部位はドメインIであることを明らかにした。さらに、RRF-DIとリボソーム50Sサブユニットの複合体の結晶化に成功し3.3Å分解能で構造を精密化した。結晶構造中でRRF-DIは50Sサブユニット上のA部位とP部位に跨る様に結合していた。これは翻訳終結後の複合体でP部位にあるtRNAがRRF-DIの結合に伴いP/E部位に移動することを示すものである。得られた複合体の立体構造から構築したRRF、EF-G、70Sリボソーム複合体のモデルから、EF-G結合により70Sリボソーム中のRRFのドメインIIはドメインIに対して60度回転し50Sと30Sのサブユニット間の相互作用がさらに弱まる可能性が示された。これによりRRFとEF-Gが50Sと30Sのサブユニットを解離すると考えられる。さらにRRF-DIとリボソーム50Sサブユニットの結晶構造をもとにrRNAをテンプレートとする低分子分子を探索した結果解離定数K_Dが数μMの化合物が得られた。
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