研究概要 |
(1)ジオールデヒドラターゼの再活性化における酵素と再活性化因子との超分子複合体の生成と役割 B12酵素は触媒反応中に機構依存的不活性化を受け易い。この不活性化は反応中間体の副反応のためにラジカルが消滅する結果,補酵素が損傷を受け、酵素蛋白質から離れないために起こる。我々は不活性化されたジオールデヒドラターゼ(DD)の再活性化に関与する蛋白質因子DDRを発見し、これがATP依存的に損傷コファクターを酵素から解離させることにより酵素を再活性化するという機構を報告してきた。本年度は、DDとDDRとの超分子複合体の生成およびそのサブユニット構造を解析し、両者がサブユニットスワッピングにより、順次1:1次いで1:2複合体を生成することを明らかにした。これまでに明らかにしてきたDDとDDRの立体構造に基づいて精密作用機構を考察し、酵素とDDRとの間に複合体が形成され、この複合体において両者のαサブユニットの間に大きな立体反発が誘起される結果、不活性化されたコファクターが酵素から解離するという分子機構を提唱するに至った。 (2)メチオニンシンターゼレダクターゼの分子シャペロン様作用 B12関与メチオニンシンターゼは、酵素反応中に超活性種であるcob(I)alaminを生成するため不活性化を受け易い。酸化により不活性化された酵素はメチオニンシンターゼレダクターゼ(MSR)によって還元的に再活性化される。ヒトMSRはヒト酵素に特異的で、大腸菌酵素は再活性化しない。昆虫細胞で高発現させたヒト酵素は粗抽出液中で非常に不安定であるが、ヒトMSRはこれを安定化する作用を示した。また、MSRがNADPH存在下でアクアコバラミンを還元し、ホロ酵素化を促進する、いわゆるホロ酵素合成酵素として機能することを見出した。よって、MSRはメチオニンシンターゼの分子シャペロン様の作用をもつことが明らかとなった。
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