研究概要 |
TCR/MHC複合体とB7/CD28複合体を介する2つのシグナル存在下では,T細胞増殖因子であるイナターロイキン(IL)-2およびIL-2受容体(R)の発現が誘導され,免疫応答が誘導される.IL-2Rはα,β,γの3種からなり.IL-2を介してヘテロ3量体を形成することによりT細胞増殖シグナルを発生する.IL-15もまたIL-2RβおよびIL-2Rγに結合し,T細胞増殖シグナルを発生することが知られている.本研究の目的は,IL-2又はIL-15と受容体の複合体の結晶構造の構造解析を行うことにより,T細胞増殖シグナルの伝達複機構および分子認識機構を原子レベルで明らかにすることである.IL-15およびIL-15Rαを各々大腸菌で発現させ,複合体として精製を行った.精製したIL-15/IL-15Rα複合体を用いて結晶化を行った.この結晶化技術に関して,特許申請を行った.データ収集を放射光実験施設において行った結果,空間群P2_12_12とP2_12_12_1の2種類の結晶が存在することが分かり,各々1.85Aおよび2.0A分解能までのデータを得た.これらの結晶の構造解析を行った結果,空間群P2_12_12とP2_12_12_1の結晶中に各々2組および8組のIL-15/IL-15Rα複合体が存在していた.構造解析の結果,負に荷電したIL-15の結合面と正に荷電したIL-15Rαの結合面が静電的相互作用により結合することが明らかになった.これらの得られた知見について,Nature Immunologyに論文発表を行った.また,7月23日付の日本経済新聞において,本研究の紹介記事が掲載された.
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