研究概要 |
膜酵素ATP合成酵素(FoF1)は、呼吸鎖がくみ出した水素イオンを膜貫通のFo部分で取り込み、膜外部分F1上でATPを合成する.私たちは好熱菌PS3由来のFoF1の構造解析を目指し、その結晶化を行ってきた。三年前、decylmaltoside(10M)またはdodecylmaltoside(12M)で可溶化、精製した標品がつくる結晶が7A程度の回折模様を示すことをみた。今年度は昨年度に引き続き、この結晶の高質化のための精製、結晶化実験、ソースとなる新規の細菌の探索、並びに回折模様の解析を行った。 1.結晶の高質化 (1)現在最良と考えている界面活性化剤12M(昨年度報告)を用いて精製した標品が,この1年半、従来のような大きさの結晶にならなくなった。種々のメーカーからの12M製品、PS3の異なるストック(菌ストック保存温度にも着目)、を組み合わせて種々の精製標品の結晶化能を調べたが、今のところこの後退の原因は特定できていない。 (2)PS3以外の菌からのFoF1をとる試みを始めた。Bacillusなどの入手容易な実験室で確立した菌は、PS3に比べて菌が壊れにくいことがわかった。高温環境の野外から採取した菌のうちいくつかのものは、通常の好熱菌と異なり、高温/室温の両方で増殖できる特性を持つので結晶化に適しているかもしれないと考えている。 2.回折模様の解析 低分解能で、高いモザイク性(3〜4度が現在の値)を示す回折模様の検討を昨年に引き続きMosflmを用いて行った。より良い解に至るためには、異なる角度位置の2個の静止データを用い、マニュアルピックオプションを使って出来るだけ多数のスポットを参加させることが必要であった。得られたオリエンテーション変数を用いて積分させたところ約20度分を処理できたが、これは以前のやり方で約4度分程度の処理できていたのと比べて良いが、まだ改善の必要がある。
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