研究概要 |
膜酵素ATP合成酵素(FoF1)は、呼吸鎖がくみ出した水素イオンを膜貫通のFo部分で取り込み、膜外部分F1上でADPとPiからATPを合成する.私たちは好熱菌PS3由来のFoF1の構造解析を目指た結晶化を行い、decylmaltoside(10M)またはdodecylmaltoside(12M)で可溶化、精製した標品がつくる六角形板状結晶が7A程度の回折模様を示すことをみた。今年度は昨年度に引き続き、FoF1結晶の高質化のためのソースとなる新規の細菌の探索、並びに従来得られている回折模様の解析を行い、以下のような結果を得た。 1.結晶の高質化 これまで最良と考えてきた界面活性化剤12Mを用いて精製したPS3由来の標品が,この2年半、従来のような大きさの結晶にならなくなった。そこでBacillusなどの入手容易な実験室で確立した菌5種、および高温環境の野外から採取した菌15種について、菌、増殖の特性、膜のとれやすさ、FoF1のとれやすさについて検討を行い、後の2点でPS3に比べて優れている野外菌株を見いだした。 2.回折模様の解析 低分解能で、高いモザイク性を示す回折模様の検討のため、今年度は従来のMosflm、xdsに加えてHKL2000,d*trekのパフォーマンスの検討を行ったが、抜き出たパフォーマンスを示すものはなかった。そこでMosflmを用いて引き続き解析を行った。Autoindexの際のビーム位置の問題は昨年度解決したので、その結果得られたcell定数を用いて、integrationの際全てのrefineを停止させ、10フレームごとにautomatch optionをかけることによって、約60度分のフレームを処理できた(昨年は20度分)。これを良くするためには完壁なcell定数を探すことが必要で、現在この線に沿った努力が進行中である。
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