研究概要 |
NotchやWntシグナル伝達経路は様々な組織で細胞の増殖および分化に関わる重要なシグナル伝達経路である。Notchは膜貫通型受容体で、リガンドとの結合でその細胞内ドメインが切り離され核内へ移行する。核内移行したNotch細胞内領域はDNA結合蛋白質CSLと複合体を形成し、標的遺伝子の転写を活性化する。一方、LEF1はWntシグナルの下流で働く転写因子であり、Wntシグナルの標的遺伝子の転写を活性化する。Nrarp (Notch-regulated ankyrin repeat protein)により、Notch蛋白質は分解され、LEF1蛋白質は安定化される。しかしながらNrarp自身は約150アミノ酸からなる蛋白質で、アンキリンリピート以外に特徴的なモチーフは存在しない。よって、Nrarp-NotchあるいはNrarp-LEF1複合体に作用する未知の蛋白制御因子の存在が示唆されていた。本年度は、Nrarpに結合する蛋白質のクローニングを酵母Two hybrid法を用いて行った。その結果、mind bomb1,mind bomb2(mib1,2)、Nodal modulator3などを単離した。中でもMib1はこれまでに、我々のグループがNotchリガンドのDeltaをユビキチン化し、Notchシグナルを正に制御する因子として報告している。一方、NrarpはNotchやsu (H)と細胞内で複合体を形成し、Notch活性を負に制御することが分かっている。しかし、NrarpとMibの関係やLEF蛋白制御におけるMibの機能についてはこれまで報告はない。神経芽腫細胞株Neuro2aでshRNAによるmib1ノックダウン株を作製しており、今後、MibとNrarp, Notch, LEF1の機能相関を詳細に調べる予定である。
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