研究概要 |
ウイルスが宿主に感染するとそれを感知して一連の反応が引き起こされる。重要な反応としてはインターフェロン系の誘導が古くから知られている。インターフェロン系の恒常的な活性化は宿主のホメオスタシスに害をもたらすため、この反応は高度に制御されている。我々はウイルスの感染を感知してこの反応を誘導する重要な機能を持つRIG-Iファミリーのヘリカーゼを発見した。また、RIG-Iを人為的に加工することにより、細胞外から薬剤を用いてそのシグナルを活性化して防御反応を誘導するシステムを作り出した。この方法はウイルス感染を全く用いないで宿主の反応を再現できる利点がある。このシステムを用いて様々な細胞においてRIG-Iの活性化を行い、活性化される遺伝子群の検索をDNAアレイを用いて網羅的に解析した。活性化される遺伝子は大きく3つに大別されることが明らかとなった。まず、RIG-Iの活性化によって選択的に活性化される遺伝子群があった。ここにはインターフェロン遺伝子群が含まれる。次にはこのようにして活性化されたインターフェロンによって二次的に活性化されると考えられる遺伝子群が同定された。ここにはIRF-7,IRF-9などが含まれる。興味深いことにはこれら遺伝子は一度分泌されたインターフェロンに依存しており、インターフェロン受容体の無い細胞においてはRIG-I活性化のシグナルによっては全く活性化されなかった。あとの遺伝子群はRIG-I、インターフェロンどちらの活性化シグナルによっても誘導される遺伝子であり、RIG-I,MDA5,LGP2などの遺伝子が含まれることが明らかとなった。特にRIG-Iファミリーの遺伝子が直接活性化されることはこの系が強いポジティブフィードバックの制御下にあることを示しており、生理的な制御に重要であると考えられた。
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