研究概要 |
マウスの未分節中胚葉においてHes7遺伝子の発現は、Hes7タンパクが自身のプロモーターに結合し、その転写を抑制することで、増減(オシレーション)すると考えられている。数理シミュレーションによって、Hes7が転写され、Hes7タンパクが自身のプロモーターを抑制するまでに要する時間時間遅れ)が、安定的なオシレーションを生み出すと予測されているが、実験的な証明はまだない。本研究では、転写調節によつて引き起こされるオシレーションの分子機構の解析を行い、オシレーションを利用して形成される体節形成のメカニズムを解明することを目的とする。 時間遅れがオシレーションの周期に影響するのかを調べるために、コンピューターシミュレーションによって、転写に要する時間を変化させ、オシレーションへの影響を調べた。その結果、転写時間が長くなると、オシレーションは安定的に起こるが、その周期が長くなるという予測が得られた。そこで、この予測を実験的に検証するために、Hes7タンパクの性質は変化させずに、転写に要する時間だけを変化させるノックインマウスを作製している。具体的には、Heg7遺伝子の3' UTRに大きなイントロン(5kb, 10kb, 20kb)を挿入することで、シミュレーションの状況をマウス個体で再現できると予測している。現在までに、変異アリルを持つES細胞の樹立に成功し、そのキメラマウスが得られている。今後、ノックインマウスにおける体節形成の変化を解析し、転写時間のオシレーションへの影響を実験的に検証する。
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