1.HSFlとHSF4によるターゲット遺伝子の協調的・結抗的制御の解析 これまでに、HSF4が生後のレンズの維持に必須であること、そのターゲット遺伝子として熱ショック蛋白質以外にも細胞の増殖と分化に関わるFGF等のサイトカイン類が明らかになった。さらに、HSF1とHSF4が結抗的にあるいは協調的にターゲット遺伝子の制御を行うことが分かっている。本年度は、レンズ発生初期には3つのHSFがすべて発現していること、生後速やかにHSF1とHSF2が顕著に減少することを明らかにした。この結果は、HSF4が生後のレンズの維持に必須であることと一致している。さらに、同じターゲット遺伝子上での結合の競合的な制御を明らかに知るために、HSF4の結合配列をin vitro binding selection法を用いて調べた。その結果、HSF1やHSF2のnGAAn(nは任意の塩基)の逆向きの繰り返し配列に結合するが、HSF4のコンセンサスはnGnnnの繰り返しであることが分かった。つまり、HSF4はより多くのゲノム配列に結合する可能性が示唆された。 2.HSF1によるIL-6発現制御の分子機構 本年度は、HSF1によるIL-6発現の制御の分子機構と生理的意義の解明をめざした。興味深いことに、熱ショックを受けたマウス繊維芽細胞は、LPS添加によるIL-6誘導が顕著に抑制されることが分かった。39度、あるいは40度の発熱レベルの温度によっても抑制された。DNAマイクロアレイ解析により、IL-6の転写抑制因子ATF3がHSF1のターゲット遺伝子であることを見いだした。ハTF3欠損細胞の解析ら温熱によるIL-6誘導の抑制がATF3を介することが明らかになった。さらに、HSF1欠損マウス、ならびにATF3欠損マウスにLPSを投与する実験により、HSF1によるATF3の発現制御が、IL-6の抑制制御を介して発熱反応をフィードバック制御することを見いだした。
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