研究概要 |
Wnt3,Wnt3aは原条領域で発現する分泌因子であり、Wnt3-/-胚では前方臓側内胚葉が存在するが原条が形成されないことが知られている。Wnt3はNodalシグナルを受けて発現することから、Wnt3発現はNodalシグナルを担う転写因子によって直接制御されている可能性が考えられる。また、Wnt3aの発現はWnt3発現が消失する頃から開始し、原条領域には持続的にWntシグナルが供給され中胚葉が生み出される。このようなNoda1を頂点とする胚後方化カスケードの全体像を明らかにするために、本年度はWnt3及びWnt3aの発現制御領域の解析に取り組んだ。 Wnt3及びWnt3aの発現制御領域の解析は、以下のようにトランスジェニックマウス法によって行った。それぞれのプロモーター領域もしくはhspプロモーター下に1acZを置き、rVistaによる種間相同領域(ECR)を参考にしてゲノム領域を連結した様々なコンストラクトを作成した。過排卵処理した♀B6C3F1から受精卵を採取し、前核にこれらのコンストラクトを注入した。E6.75もしくはE7.75で胚を回収し、X-Ga1染色でエンハンサー活性を評価した。その結果、Wnt3については原条領域で活性を有する約6kbpのゲノム断片と胚後方の臓側内胚様でエンハンサー活性を有するゲノム断片を得た。Wnt3は、原条領域の発現に先立って胚後方内胚様で発現することから、エンハンサーも分離して存在していると考えられる。腕3aについては原条領域全体でエンハンサー活性を持つゲノム領域を約1kbpまで絞ることが出来た。さらに、原条領域の後部で活性を担う領域も見いだし、Wnt3の原条領域における発現は入れ子に制御されていることが示唆された。
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