研究概要 |
コアプロモーター構造を認識する基本転写因子TFIIDは、TATAボックス結合タンパク質(TBP)と14種類のTBP随伴因子(TAF1-14)から構成される巨大なタンパク質複合体であり、転写調節因子から受け取った信号を転写量の増減へと変換する上で中心的な役割を果たす。TAF1のN末端に存在するTAND(TAF N-terminal domain)は、TBPに強く結合する性質を持ち、転写調節因子の存在下においてTBPをTATAボックスに向けて放出する役割を担うと考えられている。 上記モデルを検証するべくTANDの異所移植を試みたところ、TANDは機能を保持したまま、ほぼ全てのTAFのN,C両末端に移植可能であることが示された。一方、移植が不可能なケースとして、(1)TAF3/8のN末端では活性が弱く、TAF6のC末端では全く機能できない、(2)TAF11のC末端ではTANDのTBP結合能依存的にTAF11自身の機能が損なわれる、(3)TAF13のN末端ではTAF1がTANDを有する場合にのみ、TBP結合能の有無によらずTAF13自身の機能が損なわれる等の興味深い事実も明らかとなった。このうち(2)についてはTAF1/6/8/9のみが選択的にTFIID複合体から脱離するためであることが判明したが、(1)(3)の原因は不明である。そこで現在、TFIIDへの取り込みが阻害されるTAFの有無やその特定を含め、TFIID機能が阻害される原因に関して詳細な検討を進めている。
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