DNAマイクロアレイ法及びChIP (Chromatin immunoprecipitation)-chip(GeneChip)法によるヒト時間変動遺伝子群の解析を行うことにより、網羅的に遺伝子発現の時間的変動の分子機構、すなわち、時計転写因子の複合体ダイナミクス、また時間によりこれらがどう変動するかを明らかにしようとするものである。さらに、同定した時間変動遺伝子群に関しては、最近研究代表者らが確立したin vitro real-time oscillation monitoring system (IV-ROMS)を中心とした一連の時計遺伝子解析法を用いて、詳細な解析を行うことにより、ヒト時計遺伝子の転写制御「デコード」を目指す。 BMALl抗体を利用して、ラージスケールでヒト繊維芽細胞由来のゲノムDNAを用いてChIPを行うための種々条件検討を行い、さらにChIP-Chipのための準備を整えた。 一方、既に確立したIV-ROMSを用いた解析として、我々は、細胞自律的な時計遺伝子の概日転写に必要なシスエレメントを新しく同定した。この新規エレメントはE-box及びその6塩基下流にE-box様配列を有する新規EEエレメントである。我々は、EEエレメントの両方のE-boxが細胞自律的な振動を形成するのに必要であり、2つのE-box間の決まった長さ(6〜7塩基)が顕著な振動には決定的であることを明らかにした。さらに、ゲノムワイドの網羅的解析により、他の時間変動遺伝子の中にもこのEEエレメントが存在することを示した。以上の事から、概日転写制御には、従来のE-boxではなく、EEエレメントが重要であると示唆される。 また、NPAS2のプローモーター解析により、核内受容体ROR及びREV-ERVの結合部位RORエレメントがNPAS2の概日リズム発現に必要であることを明らかにした。
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