研究概要 |
1.Jmj複合体によるヒストン修飾とサイクリンD1遺伝子の転写抑制機構 昨年度までの成果により想定している"JmjはヒストンH3K9のメチル化酵素、G9aとGLPと複合体を構成し、サイクリンD1遺伝子プロモーターのヒストンH3K9のメチル化することにより同遺伝子の転写を抑制する"というモデルを詳細に検定し、以下の結果を得た。(1)マウス胚を用いてJmjがG9a, GLPと複合体を形成することをすべて内在性蛋白質で示した。これまでは発現量の問題や適切な抗体がなく、この結果を得ることができなかった。(2)同じくマウス胚を用いてサイクリンD1遺伝子プロモーターにG9a, GLPが結合していることとヒストンH3K9がメチル化されていること確認した。(3)G9aおよびGLP心筋細胞特異的ノックアウト(KO)マウスのそれぞれの心臓発生には大きな異常はないが、両者を欠損すると胎生致死となった。現在、このマウスでのサイクリンD1発現や増殖活性について検討中である。 2.G9a心筋細胞特異的KOマウスの心臓機能と遺伝子発現の異常 上述したようにG9a心筋細胞特異的KOマウスの心臓発生には大きな異常はないが、成体での心機能や遺伝子発現については不明であった。今回、心機能、形態、網羅的遺伝子発現プロフィールを解析したところ、心肥大、心筋核形態異常、不整脈の所見が得られた。さらに、本来心臓では発現しない遺伝子が多数発現していた。このことから、G9aが成体において遺伝子のサイレンシングに働くこと、また、その異常が心肥大等の機能異常の原因になっていることが示唆された。
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