研究概要 |
【研究目的】 植物の生産性を著しく減少させる塩ストレスの主要因であるNa^+毒性の分子機構を明らかにするために植物体内のK^+/Na^+輸送系の理解が必須である。本研究は、主要作物のイネにおいて17種存在するHAK輸送体がK^+/Na^+摂取および体内輸送に果たしている役割を解明することを目的とする。 【結果と考察】 これまでに、イネのカリウムイオン輸送体(OsHAK2、OsHAK5)をコードするcDNAを単離し、大腸菌を宿主とする検定系を用いて解析した結果、OsHAK2がK^+/Na^+共輸送体、OsHAK5がK^+輸送体であることを明らかにした。本研究では、OsHAK5 cDNAを高発現プロモーターの下流に連結した融合遺伝子を導入した形質転換タバコ培養細胞を作製した。OsHAK5発現細胞は、低カリウム条件下での増殖速度が野生型細胞に比べて顕著に高く、また、有意なナトリウム耐性も認められた。この結果は、OsHAK5が、細胞外から細胞内へのカリウムイオン輸送能を有すること、および高いカリウムイオン選択性を有することを示している。 また、イネゲノムに存在する他のOsHAK cDNAの単離を行った(OsHAK2,OsHAK5以外の15種)。15種のcDNAの塩基配列を確認した後、各遺伝子に特異的なPCRプライマーを設計し、リアルタイムPCRによる各遺伝子の発現様式を解析した。1/2MS培地(通常培地とK^+欠乏培地)に播種後8〜11日後のイネの根からPCRの鋳型となるRNAを調製した。リアルタイムPCRの結果、17種のOsHAKの転写レベルは差が大きく、OsHAK1とOsHAK7が基礎転写レベルが高く、かつK^+欠乏によって転写レベルの上昇が見られた。現在、OsHAK遺伝子発現を組織レベルで調べる実験を行っている。
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