研究概要 |
【研究目的】 植物の生産性を著しく減少させる塩ストレスの主要因であるNa^+毒性の分子機構を明らかにするために植物体内のK^+/Na^+輸送系の理解が必須である。本研究は、主要作物のイネにおいて17種存在するHAK輸送体がK^+/Na^+摂取および体内輸送に果たしている役割を解明することを目的とする。 【結果と考察】 1.HAKの分子系統樹分類 アミノ酸配列情報を元に分子系統樹を作製すると、HAKタンパク質は4つのクラスターに分類される。クラスターIに属するAtHAK5、HvHAK1、OsHAK1,5,16はK^+親和性が高い。根の高親和的K^+摂取に機能するHAKはクラスターIに属すると考えられている。クラスターIIに属するHAKはクラスター1に比べてK^+の親和性が低い(大腸菌宿主の相補性試験)。本研究で解析対象としたOsHAK7はクラスターIIに属する。クラスターIIIとIVについては研究知見が乏しく、H18年度の研究結果から研究対象としたOsHAK11,12はクラスターIIIに属する。 2.5種のOsHAKsのK^+輸送能検定 大腸菌のK^+輸送体欠損株(LB2003)を宿主に用いた相補性試験によって、先行解析対象とした5種のOsHAKのK^+輸送能を検定した。その結果、OsHAK1、OsHAK7、OsHAK12の各遺伝子が大腸菌のK^+輸送能欠損変異を相補した。 3.5種のOsHAKsの細胞内局在性解析 5種のOsHAKタンパク質の細胞内局在性を調べるため、各OsHAKにsGFPを融合させたタンパク質をシロイヌナズナの培養細胞(T87)で一過的に発現させ、sGFPの蛍光パターンを調べた。その結果、OsHAK1はERに、OsHAK11は細胞膜に、OsHAK16は細胞膜と液胞膜に、それぞれ局在するパターンが観察された。
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