研究概要 |
シロイヌナズナのゲノム上には約2000個の転写制御因子が存在する。これらのうち、栄養同化系の調節に働く転写制御因子として機能が明らかにされているものはごく一部である。本研究では、K,N,P,S,Fe,Znなどの主要栄養元素の吸収同化系で中心的な役割を果たすトランスポーター群のmRNA発現を指標として転写制御因子の遺伝子破壊株をスクリーニングすることにより、目的とする栄養同化系の制御系上流で機能する新規転写制御因子を迅速に同定する。 研究協力者の黒森ら(理化学研究所)により作製されたトランスポゾン挿入変異株を用い、転写制御因子のコード領域または上流-100bpにトランスポゾンの挿入を有する303系統(265遺伝子の転写制御因子の遺伝子破壊株に相当)を選び出しホモ系統を確立した。本年度は、窒素および硫黄の同化に着目して遺伝子破壊株のスクリーニングを進めた。上記303系統全ての遺伝子破壊株における硝酸イオントラスボーターNRT2;1、硫酸イオントランスポーターSULTR1;2のmRNA発現量をリアルタイムRT-PCRにより定量的に解析し、同トランスポーターの発現量が野生株より顕著に低下または増加する系統を複数系統単離することに成功した。これらの候補系統について二次スクリーニングを行い、NRT2;1 mRNA発現量の増加が再現する系統を2系統選抜した。これらの2系統の遺伝子破壊株で欠失した転写制御因子の硝酸イオン同化における役割について詳細な表現型解析を進めている。SULTR1;2 mRNA発現量の変動が観察された候補系統については、SULTR1;2プロモーター-GFPの発現を指標として同定した転写制御因子SLIM1との関連と硫黄同化における役割について次年度以降解析を行う。
|