研究課題
正常細胞は、お互いに接着していない状態では、運動と増殖を繰り返すが、細胞が密になり細胞同士が接触して細胞間接着が形成されると運動と増殖は停止する。この現象は、細胞の運動と増殖の接触阻害と呼ばれている。また、上皮細胞では細胞間接着が形成される過程で、細胞極性が生じ、細胞間接着装置の一つであるタイトジャンクション(TJ)により細胞の頭頂側と側基底側が分離される。しかし、細胞の増殖と運動の接触阻害や、細胞間接着部位でTJの位置が決定される分子メカニズムについては今までほとんど解明されていない。そこで本研究では、細胞間接着が形成される際に、低分子量Gタンパク質がどのような細胞内シグナル伝達ネットワークを介して細胞の運動と増殖の接触阻害や、細胞の極性形成に関与するかを検討し、本年度は、以下のような知見を得た。1.低分子量Gタンパク質が細胞の運動と増殖の接触阻害を制御する分子機構細胞間接着形成時、ネクチンによる低分子量Gタンパク質Cdc42、Racの活性化にインテグリンαvβ3の活性化が必要であること(J Biol Chem, 2006)、さらに、Cdc42、Rac活性化のシグナル伝達にプロテインキナーゼCが関与していること(論文印刷中)、を明らかにした。また、この活性化したインテグリンはネクチンと物理的・機能的に相互作用するが、細胞間接着の完成後、インテグリンαvβ3は不活性化状態となりネクチンと細胞間接着部位で共局在した。このインテグリンの不活性化は細胞運動を抑制し、細胞間接着完成後の細胞間接着の維持および細胞の接触阻害に関与すると考えられた。2.低分子量Gタンパク質が細胞極性形成時にTJの位置決定に関わる分子機構細胞の極性形成や細胞間接着部位におけるTJの位置決定に、インテグリンαvβ3が必要であるとの予備的結果を得ており、今後、来年度に向けて、ネクチン、インテグリン、低分子量Gタンパク質がどのようにこの分子機構に関わっているかについてさらに検討していく。
すべて 2006 その他
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