高コレステロール血症の治療薬であるヒドロキシメチルグルタリル(HMG)-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)は、コレステロール合成の中間代謝物のファルネシルピロリン酸(FPP)およびゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)など、情報伝達分子の脂質修飾に関わるイソプレノイドの細胞内含量を低下させ、低分子量G蛋白質の機能を阻害する。ラット心筋由来のH9c2細胞において、スタチンはリゾボスファチジルコリン(LPC)によるNa^+/Ca^<2+>交換体(NCX)の発現上昇を抑制した。この反応は、スタチンにより細胞内イソプレノイドが低下し、低分子量G蛋白質RhoBの脂質修飾が抑制された結果であることが、RNAiを用いたRhoファミリータンパクのノックダウンにより示唆された。スタチンを処理し細胞のRhoBの基礎活性を低下させた状態で、LPCとともにGGPPまたはFPPを添加すると、LPCによるNCXの発現上昇はGGPPに依存して回復した。このLPCによるNCXの発現上昇は百日咳毒素を処理することにより阻害されたことから、抑制性GTP結合蛋白質を介した反応であると考えられた。LPCによる低分子量G蛋白のイソプレニル化を測定するために、RasおよびRhoのC末端ペプチドを蛍光標識し、細胞より抽出した酵素で生じるイソプレニル化をHPLCで評価するアッセイ系を構築した。細胞から抽出した酵素によるイソプレニル化反応はGTPγSの添加より増大した。以上の結果から、イソプレニル転移酵素はG蛋白のシグナルにより制御されている可能性が考えられた。
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