分子スイッチであるG蛋白質が細胞機能発現に特異性と多様性をもたらす機構を解明するには、スイッチのオン、オフが細胞内の「いつ、どこで」起きるかを明らかにすることが必要である。本研究では、生細胞内蛋白質の活性変化に伴う構造変化や蛋白質間相互作用の解析に有効な研究手法であるFRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)の原理を利用して、酵母の蛋白質輸送経路で働く低分子量G蛋白質の時間・空間的相互作用を可視化することを目的としている。本年度は、2分子FRETの系を用いてYptファミリーの一員であるYpt31pとその標的分子であるSec2pとの相互作用を詳細に解析し、さらに酵母変異体を用いてこれらの相互作用がどのように他のYpt(Sec4p)活性化を空間的に制御しているかを調べた。 Ypt31pとSec2pにそれぞれYFPとCFPを融合させ、これらの細胞周期の進行に伴った相互作用を可視化した。monomericVenus-Ypt31pとmonomericCFP-Sec2pは芽の先端の及び娘細胞内で共局在するが、FRETシグナルは芽の先端でのみ強く観察された。分裂時には分裂隔壁でFRETシグナルが観察された。この結果から、芽の先端及び分裂隔壁でのみYpt31pとSec2pが相互作用することが明らかになった。つぎに制限温度下でYpt31p/32pの機能阻害が起きる株を用いて、Ypt31p/32pのSec2p、Sec4pの細胞内局在への働きを調べた結果、Ypt31p/32pの機能を阻害するとSec2pとSec4pの芽先端の集積が阻害された。このとき、Sec4pの娘細胞への輸送自体は阻害されなかったことからYpt31p/32pが芽の先端でSec4pの局在化に関与することを明らかにした。
|