研究課題
昨年度は、G蛋白質Goα(そのN端にCFPを組み込んだCFP-Goα)とN型Ca^<2+>チャンネルα1Bサブユニット(そのC末端にYFPを組み込んだα1B-YFP)に対する、培養細胞におけるテトラサイクリンとエクダイソンによる発現誘導システムを構築した。また、CFP、YFPのFRET用改良型蛍光蛋白質CyPetおよびYPetを、それぞれ組み込んだGoα、α1Bサブユニットも作製した。現有の全反射蛍光顕微鏡はHeCd 442 nmレーザーを搭載しているため、CFP-GoαまたはCyPet-Goαを駿細胞に単独で発現させ、全反射蛍光顕微鏡観察をしたところ、1段階消光が確認できたため、1分子の蛋白質の挙動を観察できたことが示唆された。さらに、Goαとα1Bサブユニットの共発現細胞において、作用薬のエンケファリンによりG蛋白質連関型受容体であるオピエート受容体を刺激し、G蛋白質を活性化させた時、このレーザーを用いた蛍光顕微鏡観察でYFP(またはYPet)のCFP(またはCyPet)に対する蛍光強度比の変化が確認できたため、この組み合わせでFRET現象が生じ、それを同顕微鏡装置で検出できることが分かった。さらに、CFP-GoαあるいはCyPet-Goα発現細胞において、これらG蛋白質αサブユニットの細胞膜上での1分子レベルでの動態が、受容体刺激によりどのような影響を受けるのかを調べるため、1分子軌跡計測を試みた。エンケファリン刺激により、Goαの動きが抑制される傾向が見られた。以上の結果を踏まえ、本年度は、Goαとα1Bサブユニットの共発現細胞において全反射蛍光顕微鏡観察を行い、FRET現象を捉え、両者の1分子レベルでの相互作用の観察系を確立する。さらにこの系に、様々な薬剤(リン酸化酵素活性化剤や阻害剤など)やGサイクル調節因子(RGS、AGSなど)を加えた場合の変化を検討し、薬剤や調節因子の作用機序を明らかにしていく。
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