研究概要 |
分子スイッチとして細胞内情報伝達の要として機能するGTP結合蛋白質の多くは特定の膜マイクロドメインに局在することによりその生理機能を遂行する。翻訳後脂質修飾の一つであるパルミトイル化脂質修飾は三量体G蛋白質のGα(Gs, Gi, Gqなど)、低分子量G蛋白質(H/N-Rasなど)に見られ、これら分子の局在、機能を外界刺激依存性に制御している。最近、私どもはゲノムワイドにパルミトイル化反応の責任酵素群(全23種類)を同定した。本研究では1)各G蛋白質をパルミトイル化する特異酵素の同定、2)パルミトイル化酵素の活性制御機構の解析、及び3)パルミトイル化酵素によるG蛋白質動態制御機構の解析を行う。今年度の研究実績は以下のとおりである。 3量体G蛋白質αサブユニット(Gαs、Gαq、およびGαi)のパルミトイル化酵素を23種類のパルミトイル化酵素ライブラリーを用いてスクリーニングした。その結果、DHHC3、DHHC7にいずれのGαサブユニットに対しても著しくパルミトイル化レベルを促進させる活性があることを見出した。また、DHHC3とDHHC7をノックダウンにより機能抑制したところ、内在性のGαqのパルミトイル化レベルが減少することを見出しつつある。そこで、私共はDHHC3、DHHC7をG-PATと命名した。さらに、GFP融合蛋白質を用いてGαおよびG-PATの細胞内動態を生細胞レベルでタイムラプス全反射顕微鏡を用いて可視化する系を確立した。全反射顕微鏡を用いることにより膜近傍でパルミトイル化されたGαを特異的に可視化することに成功した。現在、様々な外界刺激によりG-PATの活性がどのように制御され、Gαの細胞内動態がどのように変化するかを生化学的、細胞生物学的に明らかにしつつある。このように今年度の研究計画は達成できたと考えている。
|